回路図の代表的な構成要素の特徴や役割について確認し、関連特許を読みました。
1.キャパシタとコンデンサ
回路図を構成する部品は(1)受動素子、(2)能動素子、(3)その他の機構部品、に分類できます。
受動素子は、抵抗器、キャパシタ(コンデンサ)、インダクタ(コイル)など、供給された電力を消費・蓄積・放出する受動的な動作を行う素子です。
能動素子は、トランジスタ、ダイオードなど、増幅や整流など能動的な動作を行う素子です。
キャパシタは、電気を通さない絶縁体を二枚の導電体(アルミ箔など)で挟んだもので、その働きには以下の特徴があります。
① 電気を蓄える
② 直流を通さない(絶縁破壊が起こらない限り)
③ 交流を通す (周波数が高い交流ほど通りやすい)
インダクタは、導線を巻いたコイルで、その働きには以下の特徴があります。
① 電流を流すと磁力を発生させる
② 磁界が変化すると電流を流す
③ 直流を通しやすく交流を通しにくい
直流における抵抗のように、交流における電圧と電流の比をリアクタンスと言いキャパシタとインダクタのリアクタンスは以下の式で表されます。
キャパシタ(容量リアクタンス)XC=1/ωC=1/2πfC
インダクタ(誘導リアクタンス)XL=ωL=2πfL
<キャパシタ>
静電容量Cが大きくなる → 電流が流れやすくなる
周波数fが高くなる → 電流が流れやすくなる
直流は周波数f=0の状態の時 → 電流を妨げる作用が無限大(=開放)
<インダクタ>
インダクタンスLが大きくなる → 電流が流れにくくなる
周波数fが高くなる → 電流が流れにくくなる
直流は周波数f=0の状態の時 → XL=0、電流を妨げる作用がない(=短絡)
すなわち、キャパシタでは直流電流は遮断され、交流の周波数が高いほど通しやすくなり、インダクタでは直流電流はそのまま通過し、交流の周波数が高いほど通しにくくなります。
このキャパシタとインダクタとを組み合わせて回路を組むと、交流電流を通す際にはその波を抑えてより平滑な電流に変えて流したり、電気信号の特定の周波数帯域をカットしたり通過させたりすることができます。
コンデンサ・ワールド(TDK)
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/condenser
エレクトロニクス入門(TDK)
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/electronics_primer
2.トランジスタ
トランジスタは整流作用(電流を一定方向にしか流さない作用)を持つ電子素子です。
最初のダイオードは2極真空管で、後に半導体素子である半導体ダイオードが開発されました。
ダイオードをブリッジ状に回路構成すると、入力電圧の負電圧分を正電圧に変換整流して直流(脈流)にする全波整流を行うことができます。
Full Wave Bridge Rectifiers(The Organic Chemistry Tutor)
https://www.youtube.com/watch?v=EkHch86UXpY
3.明細書(特開2012-175780 高周波整流回路)
特許明細書(特開2012-175780)は、高調波処理機能を備えた高周波整流回路に関するものです。
高調波とは交流の中に含まれている、基本波の整数倍の周波数をもつ正弦波で、電流のひずみです。電路や接続機器に悪影響を及ぼす性質があり、高調波対策のためには第3次高調波、第5次高調波など奇数波を重点的に抑制することが重要です。
従来技術としてはキャパシタとインダクタを使った共振回路を組み合わせたフィルタ回路を用いる方法がありますが、回路全体のサイズが大型化するという課題があります。
図16
本発明はこの課題を解決するために、ブリッジダイオードによる整流素子と偶数次高調波信号に対して短絡状態となる高調波処理回路(キャパシタ)を手段として用いています。
図1
式(2)は、ブリッジダイオードの各ダイオードが理想的な動作をすれば、すなわち順バイアス時に短絡状態となり、逆バイアス時に開放状態となれば、出力電流は高周波信号の奇数成分を含まない、ことを表しており、従来技術のような奇数次高調波に対して開放となる回路が不要になります。
フーリエ展開された式は理解できませんが、「周波数の奇数次が電流に含まれていない」根拠を示す唯一の記述であり、これを「2n」で表していると理解しました。
式(2)
図5から14で実施の形態2から7が説明され、それぞれが請求項の構成要素となっています。
実施の形態2 高調波処理回路(キャパシタ)の配置変更
実施の形態3 奇数次高調波信号に対して開放となるフィルタ回路追加
実施の形態4 インピーダンス変成器追加
実施の形態5 π型LPF(ローパスフィルタ)追加
実施の形態6 T型LPF(ローパスフィルタ)追加
実施の形態7 信号源が高周波受信アンテナ
4.まとめ
回路図を読み取るために、企業サイトや動画で素子の基本的な役割を確認して整理する作業を行いました。
素子の働きや数式を理解するために、物理の電磁気の項目に戻って復習することも必要でした。
他の明細書も続けて読んで、回路図を使った明細書を読みこなせるようになりたいと思います。
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