フッ素コートの応用技術としてフライパンへのノンスティックコーティングについて調べてみました。
1.ノンスティックコーティング技術の進展
GMM社(2016年に昭和電工社が買収)のホームページにノンスティックコーティングに関する詳細な情報が掲載されています。
調理器具へのノンスティックコーティングは1954年にフランスでTEFALフライパンとして最初に実用化されました。 アメリカでは1961年に初期の製品が発売され、1980年代後半には50%以上の調理器具にノンスティックコーティングが施されるようになりました。
1900年代までのノンステックコーティングの性能はどのメーカーの製品も似たようなもので、それは2-3年で性能が劣化して買い替えが必要になるレベルでした。
コーティング性能が飛躍的に向上したのは2000年からの10年で、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)技術を始めとする様々な改良が行われました。耐摩擦性能を改善した成果をもとに「永久保証」をうたう調理器具メーカーもあらわれました。
次の技術改善の目標は金属調理器具を使用したときのコーティング持続性能(true metal safe)でした。
高性能のノンスティックコーティングは主に3層構造を採用しています。ベース基材(フライパン)との接着性を高めるために最下層にはプライマーコートが塗布されます。中間層のミッドコートは耐久性を高めるため、そして最上層のトップコートは食品非粘着性(food release)を与えるために塗布されます。
近年の耐久性向上には内的強化(internally reinforcing)と呼ばれる技術が寄与しています。小さく硬い粒子をコート層に加えることで金属製食器が与える衝撃を緩和するのです。チタン、タングステン、酸化アルミニウム、ダイアモンドなどの硬い粒子が、柔らかい樹脂(resin)を補って硬い金属製食器の摩擦力に対抗しますが、コーティングの性能は微妙な配合の違いで大きく変化します。
2.コーティング性能の評価
GMM社では評価のために様々な手法や試験機が使われています。
- Scotch-Brite Abrasion Test Machine スコッチ・ブライトパッドによる摩耗機械試験
- Accelerated Cook Test 調理環境での試験(real world kitchen)
- PSI Scratch Resistance Test コーティング硬度測定試験
- MTP(Mechanical Tiger Paw) 試験機でのタイガーポー引っかき耐久試験
- Metal Stylus test 上記試験機のペン先を交換できる試験機
コーティング技術の改良の歴史の中では、複数の耐摩耗試験で最高の評価を受けていたコーティングが新たに開発された試験方法では散々な結果になるという例も出てきました。
試験手法開発の目標は、数値化できて再現性の高い定量的評価と食品調理の実環境に近い定性的評価を組み合わせて、ノンステイックコーティングの総合力を把握することです。
3.MTP(Mechanical Tiger Paw)
Pawとは犬、猫などのカギ爪(claw)のある動物の足です。
Tiger Pawで検索するとトラの肉球のイラストなどが多くヒットします。
どちらかというと柔らかいイメージです。
ひっかく力という意味では、タイヤに大きな刃がついた4WDのおもちゃに「タイガーポー」、アシックスのスパイクシューズに「タイガー・パウ」という商品名が使われています。
ノンスティックコーティングで使われているMTP試験は「機械的かぎづめ(引掻き摩耗)試験」とでも言えそうです。
4.特許明細書との接続
ノンスティックコーティングについて調べるとともに、テフロンを開発したDuPont社の特許を読んでいます。別途記事を書きます。
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