対訳学習(Perkinelmer ICP-MS)②

訳文の校正作業、公開訳との比較をしました。
あわせて各種校正ツールの活用方法を確認し、スタイルガイド、表記法、日本語表現などについての整理も行いました。

1.校正作業


CATツール、EKWords、Just Right!6 pro、AITalk3(読み上げソフト)、Xbench2.9などを使用して働き具合を確認しました。

ツールを上手く組み合わせれば、訳語統一、表記揺れ、同音異義語、表記(漢字/ひらがな/送りがな、不適切な用語)、部品番号、原文/訳文の不整合(別内容の原文に同一の訳が適用される場合など)などを効率的にチェックできることがわかりました。

Tradosのフィルター機能は、翻訳の初期段階で頻出表現をチェックして訳語やチャンクを暫定的に確定しておけば、翻訳後の校正が楽になると感じました。今後もツールの使い方を工夫して校正スキームを確立していきます。

2.スタイルガイド、表記法


以前スタイルガイド関連の動画(1375 スタイルガイドと各種ツール、2114 スタイルガイドを読み取る)を視聴しましたが、理解を確実にするためにJTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)第3.0版や公用文作成の考え方(2022年)を読み込んで、以下の項目について整理をしました。

  • 漢字とひらがな 常用漢字表、公用文作成の考え方
  • カタカナ(外来語) 外来語の表記(長音表記)
  • 送り仮名の付け方 本則・許容・例外(複合語の名詞)
  • 数字 算用数字と漢数字

さらに、法律文書及び技術文書としての特許明細書で使用される慣用表記を学ぶために、ネットで参考情報を調査しました。

自分がよって立つ基準を作っておいて、個々の案件の指示に従ってカスタマイズしていけるようにエクセルに整理をしました。

JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)第3.0版
公用文作成の考え方(2022年)
上記のPDFには以下のような参照文書のURLが網羅されていて便利です。

  • 外来語(カタカナ)表記ガイドライン(2015年)
  • 常用漢字表(2010年)
  • 公用文における漢字使用等について(2010年)

3.助詞、読点、修飾語


バイリンガルファイルを見直したり公開訳と比較して訳文修正するときに、その基準があいまいだと感じていました。

年明けから「助詞・助動詞の辞典」を参照して主に助詞の使い方を学んでいます。即効性はないかもしれませんが、自分の語感のバイアスを修正することができると感じています。

読点の打ち方と修飾語については以下のサイトが参考になりました。「日本語の作文技術」と考え方は同様ですが、読点と修飾語それぞれで例文を使って分かりやすく説明されています。

読点の使い方(4つのルール)
修飾語とは?(四原則)
本多勝一「日本語の作文技術」のまとめ

以下のサイトも少しルールが多くなりますが、実用的に場合分けされていて実践的です。

読点ルール集

3.係り受け

翻訳前に課題設定した項目ですが、今回の見直しでも正しく読めていない箇所が多く、これが私の一番の課題だと認識しました。

In some examples, the system comprises axial electrodes configured to provide an axial field to direct the analyte ions from the entrance aperture toward an exit aperture of the pressurized cell.
いくつかの実施例では、システムは、軸方向電界を供給して、測定対象イオンを加圧セルの入口開口から出口開口の方へと向けるように構成された軸方向電極を含む。

上記のような原文でof以下のthe pressurized cellが直前のan exit apertureだけを修飾していると見えてしまい、from (entrance) toward (exit)の関係を見落としていました。

In other instances, the method comprises providing a potential to an entrance member positioned proximate to an entrance aperture of the cell, the potential provided to the entrance member configured to focus the plurality of ions received by the cell from the ion source upstream of a rod set of the cell.
その他の場合、この方法は、セルの入口開口に近接して配置された入口部材に電位を供給することを含み、入口部材に供給される電位は、セルのロッドセットの上流にあるイオン源からセルによって受け入れられた複数のイオンを収束するように構成される。

コンマでつながれた後ろの文では、configured toが直前のthe entrance memberを修飾しているように見えてしまいました。技術的な内容が理解できていれば、イオンを収束させるために構成されるのは「入口部材」ではなく「電位」だと気づくはずでした。

係り受けが正しく読めないということは、誤訳をしているということです。
これはツールを活用して修正できるものではありません。
今後は、以下の点に留意しながら、英文明細書を数多く読んで経験値を高めていきます。

  • 文章全体の構成を把握(切断して訳出する前に)
  • 文脈理解を優先させる(技術内容、図面との整合)
  • 文法解釈で補う(等位接続詞の結ぶもの、修飾関係、冠詞の有無)
  • 修飾関係の複数の可能性を認識しておく(決めつけない)
  • 原文にミスがある可能性もあるが、判断は慎重にする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください