質量分析に関する日本語明細書

質量分析関連の日本語明細書で化学分析機器に関する学習を行いました。Jasis2021の新技術説明会で多くのセッションを開催していた(株)島津製作所と(株)日立ハイテクの比較的新しい明細書を選択しました。

分析装置の様々な仕組み、装置の組み合わせと流路構成、分析対象成分と固定相・移動相の相互作用、成分ピーク時間算定のための数式を多用したものなど多様な明細書を読みました。以下に明細書タイトルと概要を記します。

再表2016/021063 粒子荷電装置 島津製作所

イオン発生装置に関する特許です。検出の精度に悪影響を与える多価イオンの発生を抑制するために、電位勾配によりイオン化した粒子のみが通過できるフィルタを配置することで、ガスイオンと粒子の接触時間を短縮します。

特開2018-156879 タンデム四重極型質量分析装置 島津製作所

複数の目的化合物に対するMRM測定(多重反応モニタリング)において、四重極質量フィルターとコリジョンセルのコリジョンエネルギーを一回の設定で行う制御方法に関する特許です。

再表2019/229942 飛行時間型質量分析装置 島津製作所

四重極型と飛行時間型を組み合わせたQ-TOF型質量分析装置です。
測定の準備期間に疑似トリガー信号を生成して、直前の分析の残留イオン排除操作やイオン光学系や四重極マスフィルタなどの構造体のチャージアップ解消操作を行うことで、分析装置の稼働率を向上させます。

特開2020-091988 質量分析装置 島津製作所 … ICPコリジョンセル

ICP(誘導結合プラズマ質量分析法)装置に複数の電位障壁を設けて不所望のイオンがコリジョンセルを通過することを阻止する装置に関する特許です。

再表2017/110118 ICP質量分析装置 島津製作所

ICP装置の消耗品であるサンプリングコーン交換時には、冷却流路内の残留水を排水する必要があります。プラズマ発生のためのArガスを残留水排水にも活用し、複数の弁の連動による間欠パージを行うことで、消費量の低減につなげます。

特開2013-145680 質量分析装置 島津製作所

ICP装置から発生する準安定希ガスは、装置内の金属表面との相互作用で二次的イオンを生成します。四重極マスフィルターなどの金属部品を希ガスのイオン化エネルギーよりも仕事関数の低いものにして、準安定希ガス由来のノイズを低減します。

特開2018-189449 分離方法および分析方法 島津製作所

超臨界クロマトグラフィー用カラムの充填剤として通常用いられるシリカゲルに代えてポリマービーズを採用することで、極性物質のテーリングを防止します。

再表2020/054462 生体膜ホスホイノシタイドの分離方法 島津製作所

超臨界クロマトグラフィーにより、ホスホイノシタイド(PIP)の7種類の異性体を分離する手段がテーマです。従来の方法ではジアシルグリセロール(DG)を切断(脱アシル化)してからPIPの異性体を分離するためDG部分の情報が得られません。
解決手段は、PIPのリン酸基を誘導体化(TMSジアゾメタン使用、O-メチル化)したうえで、ブドウ糖が環状に連なったβーシクロデキストリンをシリカ担体に結合した分離媒体が充填されたカラムを用いて、疎水的相互作用などによりSFCで分離を行うことです。

再表2019/069625 超臨界流体クロマトグラフ 島津製作所

超臨界流体クロマトグラフ(SFC)では、液体よりも拡散性が高く粘性が低い超臨界流体を移動相溶媒として用いることで、高速・高分離・好感度での分析が可能になります。
二酸化炭素を超臨界状態にするために、高圧状態となる分析流路内は高耐圧な金属製配管で構成されます。
金属吸着性物質の分析では、金属製配管との相互作用の影響で成分のピーク形状がブロードになることが技術課題です。
開示される解決手段は、マスキング液で金属配管の内面への金属吸着性物質の吸着を抑制することです。

再表2019/207870 油脂または生体サンプル中のビタミンDの迅速検出方法 島津製作所

前処理不要で迅速なビタミンD成分の抽出及び分離する多次元クロマトグラフィーシステムに関する特許です。六方バルブで流路A、B、Cを切り換えます。
A.SFC(変性剤:MeOH、固定相:極性基変性シリカゲル、移動相:CO2)
B.逆相LC(固定相:C18=疎水基変性シリカゲル、移動相:MeOH)…前処理カラム
C.逆相LC(固定相:C18=疎水基変性シリカゲル、移動相:MeOH)…分離カラム

再表2020/039478 クロマトグラフィー用検出器 島津製作所

クロマトグラフィー用の示差屈折率検出計に使用される固体発光素子は、光束周縁領域の光量が不安定です。光束の中心領域のみをフローセルへ導く光量低減素子(開口遮光板又は光拡散板)を光路上に設けて検出精度を向上させます。

再表2020/080041 液体クロマトグラフィー分取システム 島津製作所

液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)部、サンプルループ、溶媒供給流路、2次元目質量分析流路を六方バルブで切り替える構造を備えたシステムに関する特許です。
LC検出器でピークの開始点及び/又は頂点を検出し、サンプルループ容量とLC移動相流量をもとにサンプルループ接続時間を計算することで、ピークの開始点及び/又は頂点を含む目的物分取を可能とします。

特開2021-055996 電子線照射装置、分析システム 日立ハイテク

走査型電子顕微鏡(SEM)画像で分析対象領域を特定し、ガス導入と電子線照射により成分脱離を行います。成分脱離の原理について詳しい説明が記載されていました。

特開2014-192090 集束イオンビーム装置 日立ハイテクサイエンス

FIB(集束イオンビーム)装置で、イオンビームで半導体試料をエッチングしながら試料断面の分析を行います。反射電子像で新たな不純物を確認したときに限って時間のかかるEDS像検出を行うことで、効率的な分析を行います。

特開2019-145304 荷電粒子ビーム装置 日立ハイテクサイエンス

集束イオンビーム鏡筒と電子ビーム鏡筒を備えたFIB装置に関する特許です。
試料を導入する試料ステージ駆動機構と、エッチングや検出のために移動する内部機器との干渉を防ぐために、試料ステージ上の試料ホルダ識別情報を読み取ってから予備試料室からステージを移動します。

特許6505268 質量分析装置及び質量分析方法 日立ハイテクサイエンス

加熱炉で発生したガスを直接質量検出器に導入して測定する発生ガス分析法(EGA)に関する特許です。
質量スペクトルピークが重なる分析対象物質と夾雑物の検出精度を向上させるために、夾雑物の複数の質量スペクトルピーク相関を基に、分析対象物質の正味のピークを求めます。

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IT機器メーカーの会社員です(営業・マーケティング職)。 退職したあとプロの特許翻訳者としてデビューするために勉強をはじめました。  2020年10月よりレバレッジ特許翻訳講座を受講しています(第10期生)。 理科の基礎知識から積み上げて、最終的には信頼される翻訳者になることが目標です。